放送部のおもいで


 幼少期からオーディオが好きだった私は、学生だった頃、学校のどこにどのようなスピーカーが使われているのかが気になり、棟や階が異なる教室に入ると、まずスピーカーの確認を行う変わり者でした。

 このページに辿り着いたあなたも同種の人間でしょうか・・・?

音響は青春の思い出そのもの

 高校1年生だったある日、体育館の大型スピーカーを眺めていたことをきっかけに放送部の顧問の先生に声を掛けられ放送部に入部することになりました。
 放送部というと、女子部員ばかりが居て"男子禁制"というイメージがあったので近寄り難かったのですが、実際に入部してみると女子はアナウンス、男子は機材担当といった感じで上手く中和されていました。

 部の活動内容は毎日昼休みの音楽放送を行うほか、男手は主に機材の接続や調整、修理と言った技術的な任務や、式典、体育祭、文化祭などの大きなイベントがあると会場に本格的なPAセットを設営するという力仕事がメインです。
 設営任務はイベントのリハまでに放送室や倉庫からホールやグラウンドまで各機材を運搬し、数十メートルオーダーでXLRケーブルやワイヤレスアンテナを取り回して機材セッティングを行うというもので、筋肉痛必至という文化部とは思えない過酷な活動だったのを覚えています。

 しかし放送部には放送部なりにオイシイ部分があります。
まず、オーディオマニアにとって普段触れることができないような業務用音響機器を触り放題ということ。これはまさに夢のような世界で、当時の所持金では手にすることのできない高価な機器たちを思う存分にいじくり回せるという素晴らしい特典を得ることができたのでした。
 さらに、"放送室"という関係者しか入ることのできないテリトリーと、裏方に徹するという役務を与えられたことにより、朝礼では校長先生の長い話に疲れると「放送の仕事が」といった感じで音響ブースに逃げ込み、イベントでは特等席に設置した音響ブースで活動できるというオイシイ?一面を味わうこともできました。

 傍から見ればそれだけが取り柄という地味な部隊ではありますが、そんな放送部に対し、顧問の先生は「われわれは縁の下の力持ちの仕事だ」という言葉をしきりに口にしていました。それは正にその通りで、放送部は文化部の中でも特段と地味で目立たない存在ですが、イベントや式典は音響設備とそれらを設営する人間なしには成り立たないという点で音響屋は影ながら重要な役割を担っており、我らが敷設した配線や機材を通して、わずか指一本の操作で会場全体に音を行き渡らせ、自分の仕事が数百人に影響するPublicAddressという役割に非常に面白味と充実感を感じていたのでした。

 そういった活動を通して放送部として好きなだけ音響設備に触れ、オーディオマニアにとって天国のような放送室で音響生活を満喫してきたことで、より一層この分野の興味・関心を深め今日の異常なほどマニアックなオーディオ趣味に繋がっています。

 

おもいでフォト2007 〜放送室に潜入〜